風疹の免疫をもたない妊婦さんが風疹にかかると先天性風疹症候群の危険性が高くなります。予防と対策を考えてみましょう。
風疹とは
風疹ウイルスによっておこる急性の発疹性感染症で、春先から初夏にかけて多くみられます。3日ばしかともいわれるように数日で治る病気です。潜伏期間は2~3週間で、主な症状として発疹、発熱、リンパ節の腫れが認められます。
ウイルスに感染しても明らかな症状がでることがないまま免疫ができてしまう(不顕性感染)人が15~30%程度いるようです。一度かかると、大部分の人は生涯風疹にかかることはありません。集団生活にはいる1~9歳ころ(1~4歳児と小学校の低学年)に多く発生しています。
風疹ウイルスは感染者の飛まつ(唾液のしぶき)などによってほかの人に感染します。感染力は発疹のでる2~3日まえから発疹がでたあとの5日くらいまであると考えられていますが、麻疹(はしか)や水痘(水ぼうそう)ほどは強くありません。
風疹の症状は子供では比較的軽いのですが、まれに脳炎、血小板減少性紫斑病などの合併症が、2,000人から5,000人に一人くらいの割合で発生することがあります。その点では軽視できない病気です。
また、大人がかかると、発熱や発疹の期間が子供に比べて長く、関節痛がひどいことが多いとされています。一週間以上仕事を休まなければならない場合もあります。
先天性風疹症候群とは
先天性風疹症候群とは、妊婦さんのなかでも、特に妊娠初期の女性が風疹にかかると、胎児が風疹ウイルスに感染し、難聴、心疾患、白内障、そして精神や身体の発達の遅れ等の障害をもった赤ちゃんがうまれる可能性があることです。
先天性風疹症候群をもった赤ちゃんがこれらすべての障害をもつとは限りませんが、これらの障害のうちの一つか二つのみを持つ場合もあり、気づくまでに時間がかかる場合があります。
先天性風疹症候群にかかる確率
先天性風疹症候群がおこる可能性は、風疹にかかった妊娠時期により違いがあります。妊娠16週までに風疹に感染すると先天性風疹症候群になる可能性が高くなります。特に妊娠4~8週までに感染した場合、先天性風疹症候群になる確立は80%以上というデータもあります。20週を過ぎるとほとんどなくなります。
風疹の予防接種
過去に風疹にかかったことがあると考えている人のなかには「麻しん(はしか)」にかかったのを風疹と勘違いしている場合もあります。それで免疫があると思っていたら実はかかったことがなく、大人になってから風疹にかかってしまう人が少なくありません。
風疹にかかったことがあるか、あるいはワクチンを接種したことがあるが曖昧な場合は予防接種を検討しましょう。予防接種をうけることによって、成人女性なら妊娠中にご自身が風疹にかかることを予防し、あるいは妊娠中に他の人から風疹をうつされることも予防できます。(ただし妊娠中は風疹の予防接種をうけることはできません)
また女性に限らず、男性も予防接種をうけることで免疫のない妊婦さんへの感染を防ぐことができます。
風疹ワクチン接種状況
年齢によって風疹ワクチンの摂取状況が違います。ご自身がどの年代に該当するのかチェックしてみましょう。
【昭和37年4月1日以前生まれの男女】
定期接種が行われていませんでしたが、大半の人が自然に風疹に感染することで免疫があります。
【昭和37年4月2日~昭和54年4月1日以前生まれの男性】
中学生の時に女性のみを対象として、学校で集団接種が行われていたため、自然に風疹に感染する機会が減少しましたが、男性は定期接種制度が行われていないので、風疹の免疫がない人が多い世代です。
【昭和54年4月2日~昭和62年10月1日生まれの男女】
男女とも中学生の時に予防接種を受ける対象になっていましたが、中学生のときに個別に医療機関で予防接種を受ける制度であったため、接種率が低く、風疹の免疫がない人が多い世代です。
【昭和62年10月2日~平成2年4月1日生まれの男女】
男女とも幼児のときに予防接種を受ける対象となり接種率は比較的高いのですが、自然に風疹に感染する機会がさらに減少したため、接種を受けていない人には風疹の免疫がない人が比較的多い世代です。
まとめ
先天性風疹症候群の予防に何より大切なのは幼児期に風疹ワクチンの接種を受け、風疹ウイルスに対する免疫をつくっておくことです。妊娠初期でまだ妊娠に気づいていない妊婦さんに風疹をうつしても大変なことになります。妊婦さんご自身が風疹にならないために免疫があることが最も重要ですが、まわりの人も妊婦さんにうつさないように免疫をつけておくことも大事なことです。