着物の袖も洋服と同じようにたくさんの種類があります。時代や機能によって微妙に違う着物の袖の形をご紹介します。
着物の袖の形や種類
- 袂袖(たもとそで)
一般的な着物の袖の形です。袖丈は約50cm内外で、袖下の丸みも自然なカーブを描いています。詰袖(つめそで)ともいいます。袖下の丸みがやや小さいのが特徴です。
- 元禄袖(げんろくそで)
元禄時代の小袖に見られる袖の形で、袖丈が短く大きな丸みが特徴です。女児や女性用の着物に用います。
- 広袖(ひろそで)
袖口下を縫いふさがず、袖丈いっぱいに開いた袖のことで、大袖ともいいます。乳児用の一つ身、長襦袢(ながじゅばん)、夜具(やぐ:寝るのに使う、布団などの総称)、丹前(たんぜん:厚く綿を入れた防寒用の日本式の上着。どてらともいう)などに用いられます。
- 平袖(ひらそで)
小袖で、袖口を下まであけた袖。
- 角袖(かくそで)
和服の袖形の一つで、小袖のたもとに丸みをつけない四角の袖形のことをいいます。男物コートなどに用いられます。特に明治から大正にかけて、商家の人たちが好んで着ました。
- 鉄砲袖(てっぽうそで)
袖下と脇の角に三角形の襠まちを入れて腕の上げ下ろしをしやすくした筒袖。また、その袖を付けた半纏(はんてん)のことをいいます。
- 筒袖(つつそで)
和服で、袂(たもと)がない筒形の袖。男児用または大人の日常着や労働着に用いられています。
- もじり袖
半てんや作務衣、ふだん着物などに使われる変わり袖。一枚の布をひねるようにして、袖を作るのが特徴です。(もじる:ねじる、よじること)
- 巻袖(まきそで)
広袖の袖口を残し、下部を三角に折って仕立てたものです。仕事着・はんてんなどに用います。三角袖、捻(ね)じ袖ともいいます。
振袖にまつわる話
着物の袖についてお話しましたが、ここで江戸川柳をご紹介したいと思います。江戸川柳は庶民の間で生まれた五・七・五の言語に表現したものです。
ふり袖を着あきて四火の沙汰に成
最初の句は、振袖の長さがもう少しで地面に届きそうな様子を表したもので着物の袖が大振袖であることがわかります。若さを象徴した句でもあります。
しかし、次の句の「四火(しか)」というのは、お灸で病気を治すことです。背中に四角い紙を貼り、四隅の点をツボとして灸をすえます。
この女性はどこか身体の具合でも悪いのかと思いますよね。これが驚いたことに、この時代は結婚相手が見つからないと欲求不満から肺結核になると信じられていました。
それで、母親が心配して結核にならないように娘に灸をすえていたそうです。結婚相手が見つかると、結核は癒えると信じられていました。
この時代に生まれなくて良かったと胸をなでおろしたくなる話です。娘をもつ親心を感じられますが、現代ではとても信じられない話ですね。
もうひとつ、振袖にまつわるお話です。万葉集の額田王の和歌です。
昔から着物の袂(たもと)には魂が宿ると信じられていました。そのため好きな異性に向かって袖を振ることで、相手の魂を呼び込めると信じられていたそうです。
未婚の女性が長い着物を着るのは男性にアピールするためで、そのため結婚すると袖を振る必要がなくなるため、袖を短くするのだそうです。
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まとめ
時代や機能によって異なる着物の形についてお話しました。
現在では、着物の袖は邪魔になるので実用的ではありませんが、着物にまつわる話はたくさん残されていて、読んでみると面白いものです。
着物に関する話を見つけたら、またご紹介したいと思います。